2009年5月12日法務省に要望書を提出してきました対応者は刑事局参事官の山元氏、刑事局企画官加藤氏でした。
意見交換も35分行いその後法曹記者クラブで記者会見をして日本テレビの取材もありました
(全国放映:午後5時からのニュースで30秒ほど流れましたhttp://www.news24.jp/135136.html日テレ動画)
平成21年4月30日
要望書
法務大臣
森 英介 殿
Ocean ー被害者と加害者の出会いを考える会ー
代表 原田 正治
《 要望事項 》
平成21年5月より開始される裁判員制度について、少なくとも、法定刑に死刑を含む事件については、その実施を見合わせ、国会の場で改めて審議することを求めます。
《 要望理由 》
1 裁判員制度は国民の健全な常識を刑事裁判に反映させることを第一の目的として設計され、今導入されようとしています。しかし、犯罪者に対して厳しい処罰を求める世間一般の常識と、刑事裁判における被告人の人権は衝突しがちなものであり、重大な事件の刑事裁判に裁判員を導入するというその目的自体に大きな問題があると考えます。
しかも裁判員制度の設計時にはまったく想定されていなかった、被害者参加制度が導入され、すでに昨年12月から実際に運用がなされています。被害者遺族の報復感情に裁判員は多大な影響を受け、法廷が復讐の場となることが懸念されます。法律にもとづく冷静な判断よりも報復感情が優勢となるような法廷では、加害者と被害者が敵対する図式が容易に実現され、加害者と被害者の分断がますます助長されると考えます。私たちは、被告人に厳罰を求めることが、あたかも被害者遺族の心情を代弁しているかのように理解されることには耐えられません。被害者遺族がもっとも求めていることは、加害者が心から罪を反省し、被害者やその遺族に対し謝罪の気持ちや更生する気持ちを持つことです。法廷で敵意をあおられた者同士は、対話する場を持つことも難しくなるだけではなく、加害者の反省を促す機会を逃すことにつながりかねないと考えます。本来であれば、被害者参加制度という従来の刑事訴訟手続きのあり方を根本から揺るがす制度の導入が決まった時点において、裁判員裁判の導入のあり方については、抜本的な見直しがなされるべきでした。
2 昨今の死刑判決の増加や厳罰化の傾向と、国民の8割が死刑制度に賛成している状況の下では、裁判員制度が導入されることで、より死刑判決を出しやすい環境が整えられることが懸念されます。「死んで償ってほしい」と思う一方で、遺族が最も知りたいことは、なぜ自分の愛する家族が殺されなければならなかったのか、という「真実」です。加害者が処刑されることで、事件の真相が永遠に闇に葬られるだけではなく、謝罪の言葉を聞く機会も失います。また、裁判員の負担軽減のために導入された公判前整理手続には裁判員は参加できず、裁判では既に争点が整理され決定された証拠にもとづき「迅速に」裁判が終わるため、冤罪を発見することは非常に難しくなると考えます。
さらに、法曹三者によって行われてきた多数の模擬裁判においても、死刑の量刑が争われるような事件は、あえて避けられてきました。もっとも重大な死刑事件について、裁判員裁判を行うために必要な準備や検討はまったくなされていません。このような状況で死刑事件を含むすべての裁判員裁判対象事件について裁判員制度を適用し実施することは、あまりにも無謀と言わざるを得ません。
3 裁判員制度導入に際し、その広報費だけでも何十億円もの税金が使われたと聞きます。今後、この制度を導入し維持することにさらなる税金が投入されることでしょう。このような多額の税金を裁判員制度に費やすならば、被害者やその遺族を手厚く補償する制度を充実させることが先決と考えます。現行の被害者補償制度は補償金額が以前より引き上げられたとはいえ、同じ死亡事件でも補償額に差があるなど、まるでそれぞれの被害者の命の値段は違うかのような制度です。また、事件後の被害者の支援体制も不十分です。さらに、被害者と加害者が安全な場で対話をするようなシステムもないため、被害者遺族は加害者から謝罪の気持ちを聞くことができないままのことも数多くあります。被害者補償制度の充実が図られない一方で、裁判員制度の導入により、死刑判決がたやすく出るようになり、被害者遺族の心情に近い判決が出るようになったなどと言われるのは本末転倒です。
以上の理由から、少なくとも、法定刑に死刑を含む事件については、裁判員制度の実施を見合わせ、国会の場で改めて審議することを求めます。
以上
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