原田 正治
東京千代田区で行われた懇親会は、国民各界及び各層が参加して、日本の死刑制度の
あるべき方向性について提言するもので、6回目を迎えたこの日、私を含む被害者と
被害者遺族4名が加わっての意見交換でした。
“日本の死刑制度について考える”このタイトルから“死刑制度廃止”を謳うものと
お思いになるかもしれませんが、そうではありません。
2007年に起きた名古屋闇サイト事件で長女の利恵さんを亡くした磯谷富美子さんは、
死刑の廃止に反対しておられます。富美子さんに語っていただいた凶悪な事件の詳細や
加害者3人の道徳心のなさに言葉もなく、消えることのない深い悲しみと大きな憎しみは
弟をなくした私にとっても同じこと、痛いほど分かります。
懇親会は死刑廃止の賛否ではなく、被害者の処罰感情とはどのようなものか、時間の経過と
ともに処罰感情がどのように変わるのか、そして、被害者支援の制度を充実させることは
処罰感情の緩和になるのかをテーマにした意見交換です。
議事録は、日本の死刑について考える懇話会ホームページに記載されています。
日本の死刑制度について考える懇話会 shikeikonwakai.net
私と同様に被害者遺族であり、懇親会委員である片山徒有さんから被害者支援の充実による
処罰感情の緩和についてのご意見がありました。
「被害者支援は、突然、事件の被害者や被害者遺族となった時、どうしたらよいのか、
これからどうすればよいか、法律の制度をご存じない方がほとんどなので
支援のメリットはある。しかし一方で、“どうして自分の家族が殺されなければならなかったのか。
この不条理、悲しみや怒りは、被害者支援では遺族感情の緩和を含む解決にはならないので
はないか、この二つは永遠に平行線の可能性がある。」
そこで、「修復的司法」に民間人を仲裁役にすることの可能性を考えておられました。
修復的司法とは、被害者と加害者が対面で話し合って、司法制度だけでは解決できない
精神的な回復や償いを図るために、お互いの意見を伝える仲介役をするのです。
私は被害者遺族という立場だけでなく、Ocean代表としても参加しています。
Oceanは、被害者と加害者との出会いを考える会です。
加害者と向き合うことに対してのご意見は様々だと思いますが、裁判だけでは語ることの
できない精神的な回復や立ち直りなどを図ることを模索しています。
事件の数だけ被害者やご遺族がおられます。その声なき声を掬い上げたい、と強い思いを
再確認した1日となりました。
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